ワイヤーの役割について

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ブラケットとワイヤー

 歯の矯正治療ではブラケットという矯正装置を主に用いますが、ブラケットだけで矯正することはできません。重要な役割をしているのがワイヤーなのです。ブラケットとワイヤーのコンビによって矯正治療は行なわれます。実は、この治療法は今から約100年前に考案されたものです。ただし、技術だけでなく、素材なども日々、進化しており、加えて、ブラケットとワイヤーの組合せのバリエーションも増えています。

素材による種類

 ワイヤーは金属製で、中でも、一般的に用いられているのがニッケルクローム合金をもとにしたステンレススチール製です。だから錆びる心配はありません。
 ただし、金属製は目立ちますから、樹脂製やセラミック製のブラケットがあるように、ワイヤーにもプラスチック製のものがあります。これは日本で開発されました。ブラケットも同じプラスチック素材にして矯正することも可能です。矯正中の調整が難しいという難点があり、治療に採用している歯科医院は多くありません。
 その他、審美性に優れたものとして、メタルに金合金をメッキしたピーチゴールドやメタルを白色ポリウレタンでコーティングしたホワイトもあります。
 ワイヤーの最大の特徴は弾力性があることです。そのため、ワイヤーを曲げると元に戻ろうとします。この力が歯を動かす、つまり、歯を矯正する原動力になるのです。よって、ワイヤーに弾力性に欠けるセラミック製のものはありません。

断面による種類分け

 ワイヤーは素材以外にも断面の形によって種類を分けることができます。丸い断面を持つものがラウンド・ワイヤー、正方形の断面をしたものが角ワイヤーです。
 ブラケットの中央にはワイヤーを通すためのワイヤー・スロットと呼ばれる溝が掘ってあります。角ワイヤーはこの溝にはめることでラウンド・ワイヤーではできない動き、特に、角度をつけて動かすことができるのです。
 いずれのワイヤーであっても、径の大きい太いワイヤーほど動かす力が大きくなることはいうまでもありません。
 ちなみに、溝にワイヤーを通すだけでは外れてしまいますから、結紮(けっさつ)線(せん)やタイ・ワイヤーと呼ばれる別のワイヤーで上から結びます。タイ・ワイヤーのタイはネクタイのことです。ネクタイを締めることをイメージしてもらえればわかりやすいでしょう。