専門家にありがちなこととして、専門用語の多用があります。
現代では書籍やインターネットなどから情報を得やすくなっているので、そうした専門用語に詳しい方も多くいます。
ただ、曖昧に理解していたり、いまひとつ分からない、といった用語もあるのではないでしょうか?
患者さんがよりよい治療を受けられるよう、まず歯の名前について述べていきます。
患者さんの理解がより良い治療を生む
患者さんに専門用語を何食わぬ顔で並べていく。それは歯科医も例外ではありません。
患者さんに対して、ついつい専門用語を使って説明してしまうのです。
歯科医にとっては「ついうっかり」といった所かもしれませんが、患者さんは「?」となりますよね。
歯科医には、「説明責任」と「正しい情報を提供した上での合意」が求められるようになりました。
これも専門用語になってしまいますが、よく使われている用語なのであげておきましょう。前者を「アカウンタビリティ」、後者を「インフォームドコンセント」といいます。「アカウンタビリティ」を果たし「インフォームドコンセント」が成り立つように、患者さんにわかりやすく説明し、納得してもらわなければなりません。そのためにはやはり専門用語は避けてほしいですよね。
一方、患者さんもより良い治療を受けるためには、ある程度の知識をもつ必要があります。
歯の名称を知る
歯科医と同じくらいの知識をもつ必要はありませんが、彼らが使う歯の名称くらいは覚えておいていいでしょう。
そうすれば、症状を伝えるときや、自分の希望を伝える時にも役に立ちます。
歯は生後6ヵ月くらいからはえ始め、6~7歳ごろにはえ変わります。最初の歯が乳歯、はえ変わった歯が永久歯です。
永久歯は、2本の前歯と1本の尖った糸切り歯、2本の小さな奥歯、3本の大きな奥歯から構成されています。これは上下同じです。そして、前歯を切歯(せっし)、糸切り歯を犬歯(けんし)、小さな奥歯を小臼歯(しょうきゅうし)、大きな奥歯を大臼歯(だいきゅうし)と呼びます。
治療のカギとなる歯を知る
・第三大臼歯(親知らず)
歯科治療でよく問題となるのが、もっとも奥にある第三大臼歯です。一般的には「親知らず」といわれています。生まれつき生えていなかったり、生えていたとしても、スペースがないため十分に生えていなかったりすることがあり、その場合、抜歯を検討しなければなりません。
放置しておくと、虫歯や歯周病の原因になるからです。
・犬歯
歯の矯正治療をするときは、犬歯に着目します。犬歯は糸切り歯といわれるように、ものを噛み切るときに用いますが、それだけではありません。犬歯は長く、上下の歯を左右に動かすときに上下の犬歯だけが接触します。それによって他の歯を守る働きをしているのです。
高齢になって、20本以上、歯が残っている人の多くは、犬歯が良い状態で維持されています。
それだけ、歯の健康にとっても犬歯は重要なのです。
矯正治療をするときは、まず犬歯の働きを重視して他の歯を動かします。
ところが、中にはそれを無視して、大切な犬歯を抜歯する先生もいらっしゃいます。
症状は人によって様々であり一概には言えませんが、犬歯の抜歯は、その他の歯を抜歯してから検討します。
もし、いきなり「犬歯を抜歯する」と歯科医が言ったときは、その理由をしっかりと聞いてください。