日本でも増えてきた歯の矯正治療
アメリカは歯の矯正治療の先進国です。地域によっては、全体の5割以上が歯の矯正をしているといいます。ところが、昔から一貫して歯の矯正を行なってきたわけではありません。大きな転換点になったのは1970年代です。その頃、矯正をする人はまだまだ少数派でした。具体的な統計が残っているわけではありませんが、1割にも満たなかったでしょう。
その後、徐々に増えて、現在のように一般化されました。特に、ハリウッドスターやテレビキャスター、さらには、政治家や企業家なども“見た目”が重視されるにつれて、歯の矯正治療の重要度は高まってきたのです。
日本でも大学の歯学部などで調査をしていますが、調査の対象が自らのクリニックを受診した患者さんに限定されており、サンプル数はそれほど多くありません。それでも、現在では成人の約3割は矯正していると推定されます。
美意識の変化や治療の手軽さが後押し
これまでアメリカの後を追い続けてきた日本ですが、日本でも歯の矯正治療をする人が増えてきた理由は何でしょうか。
日本人の海外赴任や留学、外国人の来日など、外国人との交流の機会が増えるにつれて、歯並びに対する美意識の変化がまず考えられます。歯並びの悪さを格好悪いと思うようになったのです。
それとともに、歯科関係者の啓蒙活動も見逃せません。
さらには、矯正治療が比較的簡単になってきたことも大きな理由といっていいでしょう。矯正装置も簡便になり、目立たないものになってきました。
成人でも決して遅くない歯の矯正治療
歯並びや噛み合わせが悪いと、口を大きく開けて会話することを控えるようになり、人とのかかわりに対して消極的になってしまいます。中には、仕事に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。相手に与える印象を良くするためなどの審美的な側面だけでなく、虫歯や歯周病などの予防にも歯の矯正治療は大きく役立ちます。高齢になってそれらの病気で歯を失うと、しっかりと噛んで食べることができなくなり、日常生活において喜びのひとつである食事を楽しむことができなくなるのです。そこで、成人になってから歯の矯正治療をする人が増えてきました。最近では、60歳代や70歳代になって歯科医院を訪れる人もいます。
高齢になればなるほど、治療のリスクが高まると心配する人もいますが、年齢は治療を妨げる理由にはなりません。「成人でも」ではなく、「成人だからこそ」、歯の矯正治療を行なうようになってきたのです。