表側矯正のデメリット

　歯の矯正治療をするには、矯正装置を歯の表面に装着しなければなりません。矯正装置はこれまで金属製のものが中心でしたから、それでなくても目立ってしまいます。

　子どもにとって、少しでも他人と違うことをしたり、見た目が違っていたりすれば、からかいやときにはイジメの対象となりかねません。だから、途中で矯正治療を止めてしまう子どもがいますし、また、若い女性は、相手に与える印象が良くないとの理由から矯正治療を敬遠する傾向にあります。確かに、微笑んだとき、白い歯の上を金属製のブラケットとワイヤーが覆っていれば、お世辞にも「おしゃれ」とは思われないでしょう。

　さらに、ワイヤーに食べ物の一部が引っかかってしまうこともあります。もし、恋人と食事をした後、前歯に食べ物の残りが付いていれば・・・。

　さりとて、その場で歯磨きをするわけにもいきません。もしかすると歯に何かが付いているかもしれないと心配するだけでもかなりのストレスになってしまいます。実際、そのようなストレスを抱えている患者さまもおいでになりました。

見えない裏側矯正のメリット

　ところが、アメリカ人はこのようなことを気にしないといいます。気にするのは日本人やヨーロッパ人に多いようです。日本では、見えない裏側矯正を希望する人が増えてきました。

　歯の裏側矯正とは、専用に開発された装置を歯の裏側に装着し、それにワイヤーを通して歯を徐々に動かす治療法です。メリットはいくつもあります。最大のメリットは矯正装置がほとんど見えないことです。誰にも気づかれずに矯正治療を進められます。前述のような食事の際のストレスからも解放されるでしょう。

歯の矯正治療を行なうと、まず前歯がきれいに揃います。しかし、すべての歯列が整うまで矯正装置を外せないので、それに遮られてすぐにきれいな歯列を自分でも確認することはできませんし、人に見てもらうこともできません。裏側矯正ならば、前歯がきれいに揃った時点で満足感と喜びを感じられるのです。また、装置を固定する奥歯は裏側からの矯正のほうが動きにくく、その分、前歯が前突している場合、それを後方に引っ込めやすいといえます。美しい口元を実現させる点でも裏側矯正が勝っているのです。

装置を付けたとき、その周辺の歯磨きを念入りにしないと、虫歯になってしまいます。歯の裏側はエナメル質の層が厚く、虫歯になりにくいこともメリットのひとつです。万が一、虫歯になったとしても歯の裏側ならば目立ちません。
口元に何かが当たったときも、表側に装置があると、歯と唇に挟まれているため唇を傷つけてしまいますが、裏側矯正ならばそれも避けられます。

　メリットの多い裏側矯正ですが、表側の矯正とは異なったテクニックを必要とするため、裏側矯正を望まれるときは、専門の研修を受けた歯科医を選ぶ必要があるでしょう。