保険診療と自由診療 その2

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自由診療とは

 例えば、ここにガンにかかった人がいます。いろいろ調べてみたところ、アメリカで最先端のガン治療が始まったことを知りましたが、日本では保険適用されていません。それでもどうしてもその治療を受けたいときは、2つの方法があります。アメリカへ行って治療を受けるか、いち早く導入している日本の病院を探して、そこで治療を受けるか。
 ただし、アメリカで治療を受けるにはアメリカの医療保険に入っていなければなりません。渡航費用もかかります。日本の場合も、保険適用されていない最先端の治療法を取り入れている病院があるかどうかはわかりません。実施していたとしてもごく一部です。しかも、保険が適用されませんから、医療費の全額を負担しなければなりません。いずれにしても、かなりの費用がかかるわけです。これを自由診療、もしくは自費診療といいます。個人の「自由」な意思で「自費」として受ける治療なのです。

 ところで、これは重要なことですが、自由診療だからといって、必ずしも保険適用の治療より高い効果があるというわけではありません。貧富の差なく、平等に医療を受けられることが国民皆保険の理念だからです。ただし、効果が定まっていない高額な治療は保険適用の認可がされなかったり、時間がかかったりします。
 また、「病気である」という範囲外のものも自由診療となります。美容整形も自由診療ですし、症状があれば保険が適応される検査でも、症状が無い状態での検査では自由診療になる場合があります。

保険診療と自由診療が両立する歯科治療

 「保険を使いますか」と普通のクリニックで言われることはほぼありません。しかし、歯科医院では普通です。保険診療と自由診療の併用は認められていませんが、歯科の世界では、「接ぎ木方式」により保険診療と自由診療が両立しています。
 むし歯を例にとると、保険の範囲内で十分に治療をすることが可能です。むし歯の治療は多くの場合、まず根の治療を行ないますが、その次は歯にかぶせ物をします。根の治療もかぶせ物も保険診療で対応できますが、クラウンと呼ばれるかぶせ物にはさまざまな材質があり、自由診療のほうは選べる種類が豊富にあるのです。保険診療ではプラスチックといわゆる銀歯の材料の金銀パラジウム合金だけしか認められていませんが、自由診療ならば、天然の歯に近く、強度が強く、プラークも付きにくいセラミクスが使えます。ただし、全額負担ですし、しかも高額なのです。むし歯の治療効果はプラスチックもセラミクスも変わりありません。見た目の美しさや耐久性が違うだけです。

 歯の矯正やインプラント、審美歯科はすべて自由診療となります。使用する材質をはじめとして、歯科医の技術や導入している医療機器などに差があるからです。保険診療は決して質が悪いわけではありませんが、歯の矯正治療などは、仕上がりの美しさや生活するうえでの快適さが求められます。このように治療技術のレベルによって結果が左右される場合、そして高い質の技術を求める場合は、自由診療を選んでみてはいかがでしょうか。