矯正期間中に気をつけること その1

美味しく食べるための矯正

 高齢になって、万が一総入れ歯になってしまったら、28本の歯が揃っているときと比べて咀嚼力はおよそ35パーセントに低下するといわれています。楽しく、そして美味しく食事をすることはできなくなるのです。

 噛み合わせが悪くなると、どうしても特定の歯に負担がかかってしまいます。また、歯ブラシの届かない場所が生まれ、虫歯や歯周病のリスクが高まると歯が傷み、失われる可能性も高まるわけです。この面を考えても歯の矯正は歯の健康、ひいては体の健康にまで関わる重要な治療と考えられます。

 

食べていい物、いけない物

 いつまでも美味しい食べ物を食べられるように歯の矯正をするわけですが、矯正期間中の食事はどうなるのでしょうか。食べてはいけない物はあるのでしょうか。

 結論からいえば、食べてはいけない物は何もありません。

 ただし、注意しなければならない食べ物はあります。歯の矯正治療にはワイヤーを用いますから、それが外れてしまっては台無しですし、わざわざクリニックへワイヤーを直しに行かなければなりません。ワイヤーに引っかかりやすく、いったん引っかかるとワイヤーが外れる原因になってしまうものとして、粘性の高いお餅やガムがあります。これらには注意が必要です。

 また、硬い食べ物も矯正装置が外れる原因になります。フランスパンやせんべいなどは小さくして食べてください。これらの硬い食べ物は矯正装置をつけたての頃も痛みを強めるので避けたほうがいいでしょう。

 喫煙はあらゆる病気の原因になりますが、歯の矯正中は禁煙をしなければならないということではありません。飲酒も大丈夫です。

妊娠、出産もノープロブレム

 歯の矯正は長期間に及びます。女性の場合、その途中に妊娠や出産をされることも珍しくありません。これも何の問題も影響もありません。ただし、妊娠中はホルモンバランスの影響で虫歯や歯周病になりやすい時期でもありますので、口腔内のケアには注意を払う必要があります。

 しかし、出産前後はなにかとたいへんです。それまで通り歯科医院に通院できないこともあります。途中で治療を断念さえしなければ、また、それほど長期に及ばなければ、通院の中断も可能です。出産後、体力が回復して時間ができてから、通院を再開すればいいのです。
 けれども、クリニックに何も連絡せず、自己判断で中止してしまうことは危険です。
その時点までに動かした歯をそのままにして置くと「後戻り」の心配もあるので、クリニックに中断したい旨を伝え、必要に合わせ対処してもらいましょう。