クッションの役割をする歯根膜
歯は外から見えている部分の歯冠と歯茎の下に隠れている歯根からなっています。歯根は、顎の骨である歯槽骨の中に納まっていますが、歯根と歯槽骨の間には歯根膜という組織があります。
よって、歯根と歯槽骨は直に接しているわけでも固定されているわけでもありません。噛んだときに、歯から伝わる力が直接歯槽骨に伝わることを防ぐクッションのような働きをしているのです。
センサーの役割をする歯根膜
歯根膜はクッション以外にもセンサーのような働きをしています。食べ物を噛んだとき、「噛みごたえ」という感覚があり、料理において味や香りと並ぶ大切な要素です。食べたものが硬いのか軟らかいのか、その状態を把握しなければなりません。その他、微妙な感触や刺激などを脳に伝えているのが歯根膜なのです。
試しに髪の毛1本を噛んでみてください。それが髪の毛とはわからなくても、何かを噛んでいることを感じるはずです。それほど敏感に反応するもので、数ミクロンの厚さでも感知できるといわれています。それほど優秀な“装置”なのです。
もし、歯根膜の働きがなければ、軟らかい豆腐を食べても、その硬さがわからず、思いっきり噛んでしまうことも起こりかねません。そうなったら、歯や歯茎を傷めるだけです。
歯を動かす役割をする歯根膜
歯の矯正治療において歯を動かすときも歯根膜は重要な役割を担っています。歯に圧力を加えると、圧迫された歯根膜の破骨細胞の働きにより、スペースを空けようと骨を溶かしますが、この圧迫感や窮屈さを伝えるのが歯根膜なのです。
反対側の歯と隣の歯の間は開いていきますが、ここにも歯根膜があり、歯の間が空くことで歯根膜が引っぱられ、もとに戻ろうとします。その情報は歯根膜の骨芽細胞に伝わり、隙間を埋めるために新しい骨が作られていくのです。
歯根膜の厚さはわずか0.15~0.33ミリほどしかありません。ごくごく薄い膜ですが、様々な役割をしており、中でも、歯の矯正治療には欠かせない存在なのです。もし、事故などで歯を強打して、歯が歯根膜を突き破り、歯槽骨に癒着してしまったときは、歯を動かすことは難しくなるでしょう。