歯はどうして動くの?

歯を動かす矯正治療

 歯が前に出ていたり、歯と歯の間が空いていたりするとき、きれいな歯並びにするために行なうのが歯の矯正治療です。歯が前に出ている場合は後方へ、歯と歯の間が空いている場合は、その間を詰めなければなりません。つまり、何とかして歯を動かすことが歯の矯正治療の根幹になるのです。
 それにしても、歯って動くのでしょうか。
 歯の構造のところでも説明したとおり、歯は顎の骨である歯槽骨に根を生やしているようにみえますが、歯槽骨と一体化しているわけではありません。よって、歯槽骨の中を動かすことができるのです。

歯を溶かし、歯を作る

 矯正治療では歯を動かしたい方向へまず圧力をかけます。圧力をかけるのは数種類ある矯正装置です。すると、動く方向には隣の歯があるため、その歯は窮屈さを感じ、歯根と歯槽骨の間にある歯根膜の中に含まれている破骨細胞が、圧迫を受けた側の骨を溶かすことによって、窮屈さを解消しようとします。
 一方、歯が動くことによって、反対側は隣の歯との間が開いていき、歯と歯の間にある歯根膜が引っぱられてしまい、もとに戻ろうとするのです。歯根膜には骨を作る骨芽細胞もあり、それが骨を作って間を埋めます。
 歯と歯の間が詰まると破骨細胞で骨を溶かし、開くと骨芽細胞が骨を作るというメカニズムによって、結果として徐々に歯は動いていくのです。

歯の移動距離と時間

 矯正治療を始めてもすぐに歯は動きません。しばらく動くのに時間がかかりますが、いったん動き始めると、意外にスムーズに動きます。
 動くということは、前述のとおり骨芽細胞によって新しい骨が作られているわけですから、骨が安定するまで数週間ほどの時間が必要です。矯正治療において、ワイヤーの調整やマウスピースの交換を定期的に行ないますが、歯に一度圧力を加えると、一定期間のインターバルを空ける必要があるからです。
 早く治療を終えたいために急いで動かそうとしても、痛みが強くなるだけで、治療計画に従ったスムーズな移動はできません。ちなみに、歯を1ミリ動かすのには、約1ヵ月を目安にするといいといわれています。