マウスピースの得意、不得意

マウスピース矯正が得意とする不正咬合

 現在の段階では、インビザラインが適用できる不正咬合は限られています。軽度の「叢生」はもっともマウスピース矯正が適しているといえるでしょう。
 叢生とは、デコボコの歯並びを特徴とする乱杭歯のことです。多くの方が大なり小なりの叢生を抱えており、その意味でインビザラインが適応する方は少なくありません。乱杭歯の中には抜歯が必要な症例もあり、以前は抜歯を伴う矯正治療にマウスピース治療は適してきませんでした。ところが、最近では、抜歯を必要とする場合でもマウスピース矯正で行える場合も出てきています。

 現在はカウンセリングや検査の段階で患者さまのお話をじっくりお聞きし、患者さまの生活スタイルや歯並びの状態を考慮して、マウスピース矯正が向いているか、マウスピース矯正で対応可能な症例であるかどうかを見極めます。いくら患者さまがマウスピース治療を希望されても、マウスピースではまだコントロールできない症状があることを知っておいてください。

マウスピース矯正が苦手な不正咬合

 患者さんにとってメリットの多いマウスピースですが、適応できない不正咬合もあります。
 その代表的なものが過蓋咬合です。上の前歯が下の前歯をかぶさるように前に出ている歯並びをそう呼びます。中でも、2級過蓋咬合はマウスピースによる治療には向いていません。

 過蓋咬合もそうですが、不正咬合の原因がかみ合わせにある場合には、大きく歯を動かしていくことが難しいマウスピース矯正は不利になります。とはいえ、各マウスピースメーカーも日々マウスピースの改良を行っており、アタッチメントを付けることにより、より高度な治療が可能になるなど、さらなる進化も期待されます。

 ちなみに、比較的痛みが小さいといわれているインビザラインですが、歯が浮くような痛みが起こることもあり、痛みがまったくないとはいえません。

マウスピース矯正の今後

 マウスピース治療のひとつ「インビザライン」が日本に導入されたのは2006年のことです。まだまだ新しい治療法であり、歯科医の経験もこれから増えていき、技術も高まっていくものと思われます。先ほども述べたように、矯正装置であるマウスピースも進歩していくでしょう。

 これまでは不適応とされていた症状に関する研究は日々行なわれており、治療にチャレンジしている歯科医もいます。将来、適用範囲はもっと広がり、様々なタイプの不正咬合にも対応できるようになるはずです。