矯正期間中に気をつけること その2

虫歯や歯周病のリスク

 歯の矯正は矯正器具を装着して行ないますが、何も付けていない歯と比べると歯磨きはどうしても難しくなります。特に、ブラケットとワイヤーを用いる矯正治療では、装置に食べ物が詰まりやすい特徴があります。

 矯正装置の隙間は通常使用している歯ブラシの毛が届かない部分もあり、いつも通りの歯磨きをしているだけでは虫歯や歯周病のリスクをどうしても避けられません。

 では、マウスピース矯正はどうでしょうか?

 マウスピース矯正の場合、患者さま自身での着脱が可能で、食事や歯磨きの際にはマウスピースを外すことができます。そのため通常通りの歯磨きが可能ですが、マウスピースでも虫歯や歯周病のリスクが無いわけではありません。

 人間の唾液には口内環境を整え歯に悪影響を及ぼす菌の働きを抑える作用がありますが、マウスピースを被せた歯には唾液がなかなか行き渡りません。歯磨きが中途半端で歯の間や隙間にみがき残しがある場合には虫歯や歯周病のリスクは通常の状態より高まってしまいます。

虫歯や歯周病のリスクを減らすために

 矯正治療中も歯の健康を守るためには、食事の後の歯磨きは必須です。裏側矯正治療であれば「タフトブラシ」といった細かい部分まで磨けるツールが便利ですし、歯間ブラシやデンタルフロスも組み合わせることで、よりしっかりとした歯のお手入れができます。

 もともと虫歯や歯周病などの疾患を抱えている人は、矯正前に治療が必要になりますが、矯正中もしっかりと口内環境をコントロールしておかなければなりません。もし、口内環境のお手入れを行うと矯正治療にも悪影響を与えかねません。矯正治療中は歯磨きをいつも以上に丁寧に行い、数ヶ月に1度は歯科でのクリーニングをお勧めします。

歯根吸収について

 まず、矯正治療で歯根吸収が起こった場合にはその矯正治療に問題がある場合がほとんどです。

 歯根吸収とは、歯の歯根部分が吸収されたように溶けてしまう現象のことを言い、原因には外傷や病気などいくつかあります。矯正治療では、歯へ圧力をかけていくことで歯を移動させますが、その圧力が強すぎたり、動かし方に無理がある場合に歯根吸収のリスクが高まります。

 きわめて稀な例ですが、歯根の部分の3分の1から半分ほどの長さが吸収されてしまうこともあります。

 ただ、矯正歯科のドクターはそうした歯根吸収が起こらないように、矯正治療の前の精密検査において歯の状態を徹底的に把握して、治療計画を練ります。近年では2Dのレントゲンだけでなく、3DのCTを導入しているクリニックもあり、目に見えない歯根部分や歯槽骨の状態などが検査によってわかります。また、治療前の歯並びが立体的に分かることから、理想の歯並びへの最短移動距離や移動させる角度も無駄なく計画することができ、結果的に最小限の圧力で歯列矯正が可能になっています。

矯正治療のリスクとの付き合い方

 どのような治療にもやはりリスクはついてきます。ただし、それをあらかじめ患者さんが理解し先手を打つことで最小限に抑えられるリスクもあります。また、矯正治療に関するリスクを、患者さんにしっかり伝えた上で治療を行なっていくことがドクターの責任だと言えるでしょう。