歯並びと健康の関係

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病気の意外な原因

 マッサージ店に行くと、肩が凝っているのに肩の筋肉だけではなく、首や腕、背中などの筋肉もほぐしていくことがあります。肩こりは確かに肩の筋肉の血流が悪化して老廃物がたまり、筋肉自体が硬くなることで起こりますが、原因は肩だけにあるわけではありません。

 肩の筋肉は、首や腕、背中の筋肉などがつながっています。これらの筋肉に緊張が生じると、肩の筋肉にも悪影響が及び、結果として肩こりとなって現れます。だからこそ、マッサージ店では肩の筋肉とその周辺の筋肉までほぐしていくのです。

また、頭痛が肩こりから起こることもあるように、患部から離れた場所に原因がある病気や不調はさまざまあります。

噛み合わせの悪さと病気

 実は、噛み合わせも体の不調に影響していることがあります。

 歯並びの乱れや噛み合わせのずれは、見た目だけと捉えがちですが、かみ合わせの乱れからくる体の不調は「咬合関連症」と呼ばれ近年注目されてきています。代表的な咬合関連症の症状には頭痛や肩こりがありますが、めまいや息詰まり感、腰痛など不定愁訴全般がかみ合わせと結びついている場合もあります。

かみ合わせの悪影響

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 「噛む」役割を果たしているのは側頭筋と呼ばれる筋肉で、あごの関節から頭の横につながっています。噛み合わせが悪いとこの側頭筋に負担がかかり、結果的に頭痛を引き起こすことがあります。

 また、かみ合わせの左右の偏りも多くの問題を引き起こします。

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 偏りが大きいと頭の軸が傾いてきますが、そうするとあごから肩につながる「広頸筋」に負担がかかり緊張が生じます。
筋肉の過緊張はさらに左右の筋肉のバランスを崩します。広頸筋のアンバランスは肩こりを引き起こすばかりか、 背骨、坐骨、ひざへと影響していき、ゆがみや痛みといったさまざまな問題につながるのです。

 不定愁訴の原因は複合化していることも多く、一概にかみ合わせが原因と決めつけることはできません。また、体の歪みが引き金となってかみ合わせが悪化する場合もあります。

 ただ、なかなか意識が向くことのない「かみ合わせ」があなたの健康に悪影響を及ぼす可能性がある、ということはもっと広く知られるべき事実でしょう。

運動能力の低下

 噛み合わせが悪いと、運動能力も低下します。無理な力を入れない、全身のバランスを整える、正しいフォームを維持するといったことはスポーツの世界で常識です。噛み合わせが悪く顎の関節が正しく動かなかったり、顎の周辺の筋肉に負担がかかったりすれば、無理な力が入り、バランスが悪くなり、フォームが崩れます。

 また、ここぞ。という場面で人間は歯を噛み締めて力を発揮しますが、かみ合わせが悪いために思うように力が出せないということもあります。

 一流のアスリートが実践する体の調整はまさしくミリ単位です。そのためにできることは何でもします。ロスオリンピックとソウルオリンピックの陸上の男子100メートル走で金メダルを獲得したカール・ルイス選手は歯の矯正装置をつけて記録にチャレンジしていたほどです。

 近年ではアスリートがかみ合わせを意識し、矯正治療の相談も増えています。矯正器具も多様化しているので、日頃スポーツを行っている方でも、その習慣を変えることなく治療を行うことが可能です。