歯の構造を知る

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納得して治療を受けるために

 昔の医療のように治療する側が威張って、「すべて任せなさい」「患者は口を出すな」という姿勢は通用しなくなりました。
 患者さまとしても、納得して治療を受けるためにはある程度の知識をもっていなければなりません。歯の矯正治療を受けるなら、歯の構造を知っておいたほうがいいでしょう。

歯冠を知る

teeth 歯には、目に見えている部分と歯茎の下に隠れている部分があり、前者を歯冠といいます。
 まず、歯冠の断面を見たとき、もっとも表側、つまり表面を覆っているのがエナメル質です。エナメル質の最大の特徴は硬さで、ヒトの体の中でもっとも硬く、水晶と同じくらいの硬さをもっています。厚さは2、3ミリあり、その硬さで歯の中心部を守っているのです。
 エナメル質の内側には象牙質があり、歯の多くを占めています。エナメル質と比べると軟らかく、虫歯がエナメル質を突き破り象牙質まで達すると、痛みを感じるようになり、症状が進行も早くなることから、遅くともこの段階で治療を始めなければなりません。
 その内側、歯の中心部が歯髄です。ここには神経が通っていますから、虫歯もここまで浸食するとかなりの痛みを発します。歯に栄養分を送り、象牙質を作ったり、炎症などから守ったりするのが歯髄の働きです。歯科医が「神経を抜く」と言った場合、この歯髄を除去することになります。

 

歯根を知る

 歯根にエナメル質の部分はありません。象牙質の表面を覆っているのはセメント質です。
 歯根は歯茎に隠れて見えません。歯根の先は2つに分かれており、それぞれの先から神経と血管が歯の中に入り、根管を通じて歯髄へと栄養分などが運ばれます。歯根の部分を支えているのは歯槽骨と呼ばれる骨です。歯周病などで失われると、回復はほぼ不可能です。歯は簡単には抜けません。つまり、抜歯はできません。それにはこの歯槽骨と歯根との間に歯槽膜があるからです。歯槽膜は薄い膜であり、歯槽骨と歯根をつなぐ働きをしています。クッションの働きもしているので、もし、食べ物を噛んだときに痛みを感じるようなら、それは歯槽膜の炎症を疑っていいでしょう。
 そして、歯槽骨を保護しているのが歯茎です。歯茎は専門的には歯肉と呼んでいます。