保険診療と自由診療 その1

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世界に誇る日本の国民皆保険制度

 日本が世界に誇るものはいくつもありますが、医療における国民皆保険制度はその代表例といっていいでしょう。強制的に国民全員が医療保険に入り、いつでもどこでも貧富の差はなく低料金で医療を受けられるのです。世界でも日本を羨む声は多く、事実、アメリカのオバマ大統領はこの制度を目指しましたが、未だ日本ほどの国民の誰もが加入し、その恩恵を得られるというレベルには達していません。日本人の平均寿命が世界一であるのも、この保険制度が大きく貢献しています。もちろん、アメリカ人の平均寿命は、世界で一番の先進国であるにもかかわらず30位前後です。日本に遠く及びません。

保険診療の問題点

 医療保険には、主に自営業者などが入る国民健康保険(略称・国保)やサラリーマンなどが業種別に入る健康組合(略称・社保)などがあります。それぞれによって仕組みは異なりますが、各々が支払う保険料をもとにして運営されることが基本です。

 例えば、国民健康保険の場合、治療を受けると、治療を受けた人が負担する治療費の割合は、年齢と収入によって治療費全額の1割から3割となっています。これは薬や入院、在宅療養、訪問介護などにかかる費用も同じです。

 ただし、実際に支払われる治療費と保険料だけで制度を維持することはできませんから、公費、つまり税金が投入されています。
日本は世界でも例を見ないほどの高齢化社会になっています。国家予算の中に占める医療費の割合も年々高まってきました。このままでは国の財政がおかしくなるともいわれており、医療費は抑制される傾向にあるのです。

医療は日々進化していますし、新しい薬や治療法が開発されています。中には高額のものも少なくありません。それらを実際に治療に用いて、しかも、医療保険でまかなうと国の医療費はますますふくれ上がってしまいます。そこでこれまで日本では、医療保険を適用するか否かを厳正に審査してきました。海外で広く行われている治療法であっても、日本では保険適用されていないということは決して珍しくはありません。日本で保険が適用されるのは「必要最低限」の範囲だと言えます。

保険診療と自由診療

 けれども、患者さんにとっては治療を「選ぶ」権利もあります。どのような治療にしても、どれだけお金がかかっても、自分の希望する治療を受けたいと考える人もいるでしょう。そのため、日本では医療保険を使った保険診療と使わない自由診療(自費診療)があります。もし、保険適用されていない治療を日本で受けたければ、医療保険を使わないことになり、それが自由診療(自費診療)と呼ばれます。

 医療保険は内科や耳鼻科など一般の医療で使えますが、歯科治療でも使えることはいうまでもありません。ところが、歯科医院ではときどき「保険以外の自由診療になりますが…」とより質の高い詰め物などを勧められることがあります。虫歯の治療は銀歯を用いた際には保険診療ですが、例えば高価なセラミック等を希望するとその修復物の費用は自費診療となり保険は適用されません。
もちろん、銀歯でも虫歯の治療は事足りますが、より高い審美性や耐久性の面ではセラミックに敵いません。

このように、一つ上の治療を行いたい、より質の高いものを使いたいと考える方に希望を叶えてもらえるのが自由診療の特徴です。